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ありまりでガンアクをしたかっただけ 1

ありまりでガンアクをしたかっただけ 1
2013.03.12UP

かわふじ
本文はコンティニューから→




 むき出しのコンクリートが妙な圧迫感を生んでこそいるが、それでも十分に広く薄暗い空間。
 天井からつられた蛍光灯がちらちらと頼りない光で室内を照らしている。
「例のもんはできたのか?」
霧雨魔理沙はそういいながら小さなカウンターの向かい側の椅子に腰掛けた人物に問いかけた。
妙にゴシックな、それでも本人曰く抑えめな白黒のフリル満載なスカートに、同じく黒のリボンブーツの出で立ちでカウンターに乗り出していた。
 いつもの白黒。
 なれない空間に、アリスは小さくため息をつきながらも、少しだけそんな魔理沙に安心を覚えながらその様子を見守った。
 カウンターの向こう、ニトリが不敵に口の端に笑みを浮かべながらカウンターの下から何かを取り出した。
 頼りない照明の明かりを鈍く反射させる鉄の塊。
 回転式の拳銃が一つ置かれている。
「いい出来じゃないか」
「当然だね」
 魔理沙の反応に、僅かな照れを隠しながら作業着姿のニトリが饒舌に続けた。
「その名も”怒れる牡牛”レイジングブル.44口径。もーっと強いリボルバーもあるけれど、銃撃戦の間合いじゃ威力はそうかわらないからね」
 ニトリは心底楽しそうに銃を取り上げると、手のひらで銃をくるりと回転させて、魔理沙に銃把を向けた。
 うんむ、とうなずいて魔理沙がそれを受け取る。
 重量級の銃を受け取り一通りの点検を済ますと、さっさと銃をスカートの後ろに挟んだ。
 魔理沙のリアクションの無さに、少しうなだれたニトリは素っ気なく言った。
「弾はお代をいただくからね」
「もちろんだとも」
 そんなやり取りを見つめていたアリスだが、ふと気配を感じて振り返った。
 狭い店の戸が開き見知った顔がやってくる。
 街で発行部数不明のタブロイド紙を発行している射命丸文だった。
 一瞬驚いた顔を見せるものの、すぐに喜びの表情で駆け寄ってくる。
 こういう時は大抵ろくな事はないのだ。
「これは、魔理沙さんとアリスさん。ちょうどいいところに」
 当たったと、内心つぶやきながらアリスは小さな会釈で返答した。
「おう?どうしたんだこんなところで」
「こんなところとは失敬な」
 ニトリが小さくつぶやいて背中を向けた。
 当の魔理沙は全く気に留めた様子もなく、射命丸との会話を続けた。
「お仕事の話ですよ」
「お前はわかっているじゃないか。ちょうどいい的を探していたところだからな」
 なるほど、とアリスは納得した。
 あんな素っ気ない対応だったが、しっかりと新しい銃を使いたいと思っているのだろう。
 喜ぶのは使ってみた後と言う事だろう。
 あいにく、ニトリの店にはシューティングレンジなど備わっていない。
 使うに耐えない銃だったら、という考えがどこかにあるのかもしれない。
 アリスは、魔理沙の背中の白く輝く銃をちらりと見てそう思った。
「それがですね、また妖精が街に出まして。」
「それは私の仕事じゃないだろう。山の連中はどうした?」
「それが、どうやら今は動けない状態のようで。ここにくれば誰かいるだろうと思いましてね」
「それじゃボランティアじゃないか。生憎私には——」
「もちろん、支払いは経費含めすべてこちら側で持ちますよ」
 射命丸はニヤリとしながら魔理沙の会話を遮った。
「なら、心配ないな。ニトリ、弾代はこいつにつけだぜ」
 聞いているのか聞いていないのか、ニトリは作業台で銃をいじり続けている。
 そんなニトリにかまう事なく棚から無造作に弾薬を掴んでポシェットに放り込むと、外へと飛び出していった。
「相変わらず騒がしいわね」
 そういえば店にやってきてから初めて言葉を発したと思いながら、アリスはそういった。
「それがいいんでしょう。仕事が頼みやすくて助かりますよ」
「トリガーハッピーでしょ?弾が売れるからたすかるんだよね」
 二人の感想にアリスが苦笑いをしていると、怒り顔の魔理沙が戻ってきてアリスの腕を引っ掴んだ。
「え?」
「お前も行くに決まっているだろう」
「ちょっと、聞いてないわ」
 出口に向かって引きずられながらアリスはニトリと目が合った。
「持っていきなよ」
 当然放られた銃をなんとか受け止める。
「お代はーー」
「魔理沙につけとくよ」
 ニトリはそう言い親指を立てると、半ば強引に連れ去られるアリスは苦笑しながらお辞儀をして扉の外に消えた。
 突然静かになった室内で、ニトリがため息をつく。
「魔理沙じゃないとだめな案件だったのかい?」
「ちょっと面倒事がありまして、中立な立場の人の当てをあまり知りませんからね」
 射命丸はもニトリ同様小さく息を吐いて肩の力を抜いた。
「相変わらず、バランスが悪いね」
「そうでしょうとも。新聞のネタに困らなくていいですよ」
「新聞なんてただのカモフラージュじゃない」
 そうニトリが言うと、射命丸は小さく笑った。
 
つづく
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