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【東方SS】 「パチュアリでもいいじゃない!?」 【サンプル】

九月九日 紅のひろば「パチュアリでもいいじゃない!?」
前半部

書いた人:かわふじ
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 一目見て異様とわかる紅い館、紅魔館にアリスはやって来た。
 広大な湖の畔に佇むそれには、こんな暑い日にもかかわらず窓が一切存在していなかった。
 不気味な館の門前でアリスは降り立つと、門番に挨拶しようと周囲を見渡す。
 すると、こんなに暑いにもかかわらず、門番は涼しい顔で居眠りしていた。
 これで本当に門番がつとまっているのか分からないが、眠り続けているところを見ると、それでも十分に機能しているのだろう。
 そもそも、吸血鬼の住処に押し入ろう等と考える妖怪は今やほとんど居ない。
 それは幻想郷自体が今は危なっかしいパワーバランスの上でかろうじて安定しているということでもあるし、もしも本気で攻め入ろうとする者に対しては門番が立ちふさがったところで時間稼ぎが関の山だろう。
 立ったまま外壁に背を預けて眠る器用な門番に妙な感心しながら、アリスは小さく挨拶をしてその脇を通り過ぎた。
 小さな外門を抜け、館の大きすぎる戸を開けると外の暑さとは異なり、館内部は妙にひんやりとしていた。
 何故こんなに涼しいのか、アリスは簡単に正体をつかんだ。
 パチュリーの属性魔法がかかっているのだろう、どことなく水属性の魔法の気配が漂っていた。
 魔法の力で常に館の中は快適に保たれているのだろう。
 思いの外快適な空間に足取りを軽くしたアリスは、無人の大きなロビーを抜け図書館を目指した。
 小さな、いかにも地下へ続いている階段を下ると目の前にまたしても扉が現れる。
 魔力で閉ざされた扉自身が来訪者を選別しているのだろうか、目の前に立つと音もなく扉が勝手にひらいた。
 目の前に広がる広大な空間に思わず目線が上へ上がる。
 空間を魔力で無理矢理拡張した高い天井。
 小さなロウソクの明かりがいくつも灯り、天井の高さまで広がる壁面の本棚が視界を圧倒する。
 その下の広大な空間には数え切れないほどの書架が立ち並び、星の数ほどの本を擁していた。
 外の世界から流れ込んできた丁寧な作りの本から昔から存在する魔法書、どんな魔法使いが生前書いたかも知れないような魔法書に混じって、パチュリー自らが作った本がいくつも納められていた。
 アリスの自宅にも本棚は存在するが、それは研究に使う資料を保管するための物で、せいぜい壁一面に数十の本が並ぶ程度だった。
 この図書館が個人的な研究の為に集められた本だとすると、驚くがそれはパチュリーの研究に関することだ。
 魔法使いはおのおのが研究の使命を持っている。
 アリスの場合はそれが人形の自律に関するものであるし、パチュリーに取ってそれは未知の物を本にまとめるという使命なのだろうと推測していた。
 自宅の本棚と比較したアリスは大きなため息をついて図書館に踏み込んだ。
 どこまでも続くかのように錯覚すら覚えるほど乱立する本棚の隙間を縫って、図書館の中心部へと歩みを進めた。
「何しに来たの」
 途中で図書館の主、パチュリー・ノーリッジの声が響いた。
 小声なのにも関わらずここまで届くのは空間に込められた魔法のせいだ。
 アリスも、決して声を張り上げることなく静かに答える。
「パチュリーと話しをしに」
 そう伝えるも、パチュリーからの返答はなかった。
 文句を言われないところを見ると、拒まれている訳では無いらしい。
 アリスは、そのまま足を進めてどんどんと中心部へ向かった。
 図書館の本棚は迷路のように入り組んでいて、一見規則性がない。
 それがパチュリーの趣味なのか、これが本を最適に整理した結果なのか分からない。
 もしかしたら、侵入者対策のためにわざと迷宮を構築しているのかもしれない。
 アリスはパチュリー本人の魔力を頼りにどんどんと迷宮を進んでいく。
 すると開けた場所に出る。
 本棚に囲まれるようにしてできた広い空間の真ん中には大きな丸い机が置かれていた。
 パチュリーの城である。
 もっとも本が山ほど積み上げられているため、その机がどんな形をしているのか一見分からないほどだ。
 アリスは本に埋もれた机から椅子を見つけ出すと、静かに腰を下ろした。
 目の前ではパチュリーがせわしなく本の文章を目で追っている。
 止めどなく瞳が動く度、長いまつげがそれに釣られて動く。
 病的なほどに真っ白なシルクのような肌に、ゆらゆらと動くランプの光が濃い影を作っている。
 まるで西洋の球体関節人形を見ている気分になる――それほどパチュリーは繊細に見えた。
「ねえパチュリー、ものは相談なんだけど……」
「嫌よ」
 目の前に現れた直後の相談に、パチュリーは迷い無く拒否の言葉を発する。
 相談を聞く気もないのか、パチュリーのページを捲る指に止まる気配は無かった。
「まだ何も言って無いじゃない」
「なら、聞いてあげるわ」
 パチュリーの素っ気ない対応に早くも心が折れそうになるアリスだが、めげずに話しかけた。
「里で夏祭りがあるのよ」
「それで?」
 アリスの言葉を聞く間も、パチュリーは決して読書の手をゆるめることはなかった。
 ある程度読み進めては、手元の紙にメモを取っている。
 読書に集中しているせいか、たまに愛用の羽ペンをインク瓶に差し損ねる姿を見る。
「去年は魔理沙と行ってきたわ。小さな屋台なんかもあって結構楽しいのよ」
「嫌よ」
「彼岸の出店程じゃないけどね、普段は店で売らないような変わった食べ物が多かったり」
「行かないわよ」
 パチュリーの冷たい言葉に、アリスは思わず机に突っ伏した。
 まるで一人言を言っているような気分になるが、まだその方が否定されない分だけマシだろう。
 何かを少し考えてから、突っ伏した体勢のまま顔だけパチュリーに向けて呟くように言った。
「まだ話している途中なのに。それはさすがに誘う気も削がれるわ」
「大丈夫よ。それが目的だもの」
 アリスが大きなため息をつくと、どこからとも無くお盆に紅茶セットを乗せて小悪魔が現れた。
 パチュリーの使い魔であるが、力を持った歴とした悪魔である。
 契約を交わさず悪魔を使役できるとなると、相当な術を組んだのだろう。
 名前も知らない小悪魔は、アリスの前にカップを置くとおかしそうに控えめに笑った。
「まるで今日のアリスさんは魔理沙さんみたいですね」
「やっぱり魔理沙にも誘われているのね」
「成果は上がらないですけどね」
 小悪魔は笑って言うと、パチュリーの前にもカップを置いた。
 アリスの前に出てきたのアイスティーだが、パチュリーのそれは湯気が立っている。
 きっと紅茶をすべて飲む事が無いパチュリーが香りで楽しめるようにわざとホットにしているのだろう。
 アリスはそんな小悪魔に感心しながら、紅茶を一口飲んだ。
 おそらく外の世界から流れ込んできた紅茶の一種だろう。
 アイスティーなのにも関わらず香り高い様子からアリスはそう推測する。
 もっとも、この茶葉を仕入れてくるのは小悪魔ではなく、館のできすぎたメイド長であろう。
 一度、紅魔館の厨房をのぞいてみたいなと、アリスは思った。
「研究はいいのかしら?」
 ぼーっと考え事を続けるアリスに、あきれたような声でパチュリーが言った。
 別に時間を無駄にしているつもりは無いが、魔法使いという生き物故時間はいくらでもある。
「ゆっくり進めるわよ」
「のんびりなのね。魔理沙と同じ」
「魔理沙はちがうでしょ」
 アリスは苦笑いしながら否定する。
 魔理沙の場合、やっぱり人間という種族上遠回りせざるおえない。
「人間に魔法使いほどの集中力はないわ」
「なら貴方はまるで人間ね」
「ストレート過ぎなのよ」
 アリスはそう言ってまた机に突っ伏した。
 集中力など人間も魔法使いも大きく変わらない、とアリスは考えている。
 人間は一時しか集中できないが、魔法使いや妖怪は違う。
 しかしそれには寿命的な相対性が関わってくると思うのだ。
 一〇〇年生きる人間は一時だが、いつになったら死ぬのかわからない妖怪など一時が数年に及ぶこともある。
 妖怪がかつて使っていた暦には一日という単位が無く、最も小さい単位が一ヶ月で、一年は人間でいう約六〇年に相当する。
 そこから考えても、人間サイドと妖怪サイドを比較する事自体がナンセンスなのだ。
 アリスは魔法使いになって間もない――もっとも、人間からすればかなりの時間かもしれないが、パチュリーから見ればそうだ。
 それに引っかけたパチュリーなりの皮肉なのだろう。
「夏祭り行きたい」
 アリスが机に顔を埋めたまま呟くと、パチュリーは心底面倒くさそうな物を見るような目でアリスを見た。
「そんなに行きたいなら魔理沙と行けばいいじゃない」
「パチュリーにも参加して欲しいのよ」
「今すぐ帰りなさい」
 パチュリーの冷たい言葉に吹っ切れたのか、アリスはガバッと顔を上げる。
 急に顔を上げたものだからパチュリーがびくりと驚いた。
「浴衣とかを着て盆踊りとか楽しそうじゃない。パチュリーと一緒に一回行ってみたいのよ」
「浴衣が無いわ。あっても嫌だけど」
「私が縫うわ」
「もっと嫌よ」
「そうよね」
 肩を落としたアリス。
 小悪魔が本の整理をしながら興味深そうにアリスの様子をちらちらと見ていた。
 普段やって来ては静かに本を読んで、いつの間にか帰ってしまうアリスのこんな姿に興味が引かれたのだろう。
 それに気がついたパチュリーが、困った顔で小悪魔に助けを求めた。
「貴方も何か言ってあげて頂戴」
 急に話しかけられ何冊か本を崩しながら小悪魔が楽しそうに答える。
「付き合ってあげたらどうですか?外もたまには面白いですよ」
 さすが悪魔と言ったところ。
 面白いアリスを観察するよりも、小悪魔にとって言い寄られて困っているパチュリーを観察した方が面白いと言う結論に至ったのだろう。
 想定外の小悪魔の反応にパチュリーは言葉を続けた。
「そもそも、死者の踊りなんて嫌よ」
「え?」
 会話の中で初めて登場した単語に、アリスは首をかしげた。
「盆踊りの原点よ。地獄行きを逃れた死者が喜んで踊り始めたのよ、それが盆踊り」
「知らなかったわ」
 アリスが素直にパチュリーの知識に感心していると、小悪魔が何かを思いだしたように口を挟んだ。
「諸説あるみたいで念仏踊り、もとい雨乞いの踊りが起源だとも言われていますよ」
「暑い時期だものね。その踊りで雨を得た人間が感謝の意味で継続していると言う説ね」
 さすが本の虫、パチュリーのみならず小悪魔までも博識なのかとアリスは衝撃を受けて立ち上がった。
「やっと諦めたかしら」
「……出直してくるわ」
「来るのはいいけれど、面倒事は勘弁よ」
 パチュリーの言葉を背に受けながらとぼとぼと本棚の海に消えていくアリスに、小悪魔は何だか面白くなりそうだと思いながらその姿を見送った。
 図書館につかの間の静寂が戻った。
 パチュリーは紅茶を一口飲み込むと、小さく安堵のため息をついて本を捲り始めた。
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