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【C80新刊サンプル】「ずっと一緒だと思っていた」

2011.07.31UP
「ずっと一緒だと思っていた」プロローグ

かわふじ


警鐘


 人間の世界から忘れ去られたものが最後に行き着く場所、幻想郷。まんまるい月が妖しく、湖の畔にそびえる紅魔館の輪郭を浮かび上がらせていた。
 一時、幻想郷のパワーバランスを乱すほどの力を有した吸血鬼の館の地下、人知を越えた力で拡張された大きな図書館には一人の魔法使いが住んでいた。約百年も図書館で本を読みふけり、その合間自分で書いた魔法書をその本棚にため込んだ魔法使いは、今夜も自分の机に向かって本を読みふけっている。
「何の用?」
 本から視線をあげることもなく、パチュリー・ノーレッジが誰もいないはずの空間に呼びかけた。
 幾重もの本棚が連なる通路の奥、扉も窓も存在しない位置から一人の女が足音を響かせながら歩いてきた。
「ここに来るのは初めてだわ」
「来るのは……ね」
「なんだ、気がついていたの。思った以上に魔法使いって優秀なのね」
 金色のロングヘアに、妙な帽子を載せた女――八雲紫が傘で床を小突きながら姿を現した。どこから来たのか訪ねるのは愚問だろう。
「何の用?」
 パチュリーが紫のセリフに気分を害することもなく、先ほどの質問を繰り返した。
 紫は機嫌良さそうにパチュリーが腰を据えている大きな机の前までやってくると、その上に散乱していた紙を一枚取って、勝手に羽ペンまで使ってメモ書きを始めた。
「ここは来客があってもお茶一つ出てこないのよね」
「初めて来たのに?」
「来るのは初めてだからよ」
「覗きは認めるのね」
 メモ紙を指でつまんで作り出したばかりの境界に放り込んだ。
「何のまね?」
「オーダーよ。ボーダーとかけた洒落じゃないわよ。貴方の分は注文してないけど、問題ないでしょ」
「……つまらない話ね」
 パチュリーは本から視線をあげることなく言った。
 紫が境界にメモ紙を放り込んできっかり十秒、新たな人物が机の脇に現れていた。
「いらっしゃいませなんて言う義理はありませんわ。せっかくなら正面からいらしてくれればいいのに」
 銀のお盆にティーカップとお菓子を載せた十六夜咲夜がいつの間にかたたずんでいた。
 咲夜は一応の挨拶を済ませると、紫の前に積んである本の上にカップとお菓子を置いた。
 本の上だというのにパチュリーにはとがめるつもりが無いらしい。
「ちゃんと正面から来たわよ。ここの空間は予測が難しいから、門番に聞いたら丁寧に最短ルートを教えてくれたけど」
「門番の所為ですか。お嬢様に関わる事でないなら許します」
「さてそれはどうかしら?」
 紫が妖しく微笑むのをじっと見つめた咲夜は、しばらくして深々とお辞儀をすると、来たときと同じく音も立てずにその場から消えた。
「ここには面白いのが多いのね」
 紫がパチュリーに言葉を投げるが、当人はそれを無視して読書を続けた。
 つまらなそうにカップに口を付けながら、境界を開いてその中を見つめる。
「つまらない文章ね。全く何が書かれているのかわからないわ」
「当然よ」
 パチュリーの肩の位置に出現したもう一つの境界には触れることなく、パチュリーが言い放つ。
「魔法書を解読されたら魔法使いは存在価値を失うわ。それだけ魔法書の困難なのよ」
「なら暇つぶしに解読してみようかしら」
 パチュリーが初めて本から視線を上げ、紫を睨んだ。
 妖しく微笑む紫に魔法書の解読などできるだろうか。
 彼女の瞳からは何を考えているのか、全く読み取る事ができなかった。
 数学分野に恐ろしく精通している紫ならば、暗号解読の要領で時間さえあれば解読する事はおそらく可能だろう。
 魔法書の解読、それは魔法使いにとっての死だ。
「何しに来たの?」
 パチュリーの怒りの視線を受け止めた紫は、それでも優雅にカップを置いてから口を開いた。
 いつの間にか紫の顔から笑みが消え、真顔に変わっている。
「魔法使いは嫌いなのよ」
「それでまずは私から?根絶やしにでもするつもり?」
 まるで呪文でも唱えるような早口でパチュリーが言った。
 紫は出現させた境界に腰を下ろして、長い足を組んでから答えた。
「これまで魔法使いは幻想郷といえど隔離された魔界という別の世界に生存していたわ。
 それがどういう意味か、貴方は考えたことが無いでしょ」
「魔界という環境が魔女にとって都合がよかったからよ。
 それに、魔界は魔法使いが作った世界、魔力効率がいいから好きで閉じこもっていただけだわ」
 パチュリーが視線を紫に向けたまま即答すると、本のページを一つめくった。
「貴方がここに閉じこもっているように?」
「そうよ」
 紫の嫌みを否定することなく肯定したパチュリーは、ついに視線を本に戻した。
「魔法使いは異端よ」
 恐ろしい言葉が紫の口からためらいもなく発せられる。
 言葉が膨大な蔵書に吸い込まれ、一瞬で消える。
 言葉すら幻想であったかのような、重い沈黙が図書館を支配した。
 パチュリーは身を一瞬震わせ、ページをめくる指がその途中で止まる。
「魔法だって筋は通っているわ」
「そうね、魔法だものね」
「どう異端なのかしら?」
「わからないの?」
 難しい言葉ではなかった。
 単なる問いかけの言葉に過ぎない一言だが、その一言には紫の激しい感情が込められているのがわかった。
 今や幻想郷有史以来の古強者である紫にふさわしい恐ろしい程のプレッシャーが図書館中を支配している。
 怒りの原因が魔法使いにあるのは紫の会話で十分わかる。
 しかし、どう幻想郷で異端なのか、パチュリーにはまるで見当がつかなかった。
 一瞬のうちに殺気を納めた紫が、また妖しい微笑みを浮かべて困惑するパチュリーを見下ろした。
「少し試させてもらってもいいかしら」
「……何を」
「異端かどうかよ」
 紫が立ち上がって境界を発生させると、その中にカップを放り込んた。
「何が異端かわからないわ」
 パチュリーの言葉を背に受けながら、さらに大きく口を開けた境界に片足を踏み出しながら紫が答えた。
「なら今度は貴方が魔界を作るのね」
「……」
 ひらひらと意味もなく手を振って、紫が境界とともに消え去った。
 しばらく境界が消えた場所を見つめていたパチュリーは珍しくため息をつくと、今まで読んでいた本を放り出してロウソクを睨みながら考え事を始めた。

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