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銀子の話

2011.07.05UP
【紅】「銀子の話」(真九郎・銀子)

かわふじ



 校内の昼休み独特の喧噪から離れた新聞部の部室で、村上銀子は頬杖をつきながらマウスを操作していた。
 自前のノートパソコンの画面には途方もない量の情報が踊っていた。
 仕事の合間の気休めでパソコンを弄っていたのだが、その気休めがまたしても情報収集という事に気がついて思わず深いため息をついた。
 村上銀子は祖父であり伝説の情報屋だった銀次の情報網を継いだ学生にしながらの凄腕の情報屋である。
 後を継ぐことなくラーメン屋になった父親の代わりとはいえ、自分がその道に嵌ってしまっていることを実感して、また小さなため息をついた。
 目的の情報は見つかりそうに無かった。
 依頼の情報ならばもっと熱心に調べるところだが、自分が探している情報となればそれほど重要度は高くない。
 昔の情報を頼りに片っ端から情報や画像を目で見て確認するだけのルーチンワークしか道が残されていないと知り、暇な時間を見つけて情報収集を続けていた。
 見つかれば幸運、そんな思いで画面を見つめ続けた。
 マウスのホイールを回す振動がコツコツとデスクを鳴らした。
 ふと、画面が滲んでいるのに気がついて、銀子は目をしばたくも直らずメガネを外して目を強く擦った。


 夕方。
 学校が終わった後、銀子は一直線に自宅のラーメン店にランドセルを放り出して近くの河川敷まで駆け足で向かうのがちょっとした日課だった。
 土手を転ばないように気をつけながら駆け下りると、橋の下に小さな段ボール箱が一つ置かれていた。
 その前ではまだランドセルを背負ったままの男の子が段ボール箱の中をのぞき込んでいた。
 銀子は足を止め、すっかり乱れた息を整えてから彼の名前を呼んで歩み寄った。
「真九郎」
 呼びかけると、真九郎は不思議な表情を浮かべて振り返った。
「銀子ちゃん遅かったね」
 銀子はランドセルを置かずにまっすぐくれば良かったと、少しだけ後悔した。
 二人で並んで段ボールをのぞき込むと、中から元気にしっぽを振る子犬が顔を出していた。
 段ボール箱には銀子の字で“ギンクロ-”と書かれていた。
 名前について真九郎が訪ねると、銀子は胸を張って“銀子”と“真九郎”が両親だから“ギンクロ-”だと答えた。
 そのときは不思議に思っていた真九郎だが、すぐに慣れて二人でギンクローと呼ぶようになった。
 まだ小さいのに捨てられていたところを拾ったものの、どちらの家でも飼うことができず仕方なく二人で橋の下で世話をすることにしたのだ。
 交代で餌を持ってくることにしていたのだが、気がつくといつも二人で並んで餌をあげるようになっていた。
 早い夕食を終えた子犬にリードを付けると、犬はたまらず駆け出した。
 リードを握る銀子が引っ張られて駆け出すと、真九郎もその後を追いかけた。
 長い河川敷をまっすぐ走る遊歩道が途切れる部分があった。
 そこで少し休憩をして、今度はギンクローを間に挟んで並んでゆっくり歩きながら橋まで戻るのだ。
 帰り道、リードを握る真九郎に銀子は質問をしていた。
「将来の夢?」
 真九郎は困ったように首をかしげながら考えた。
「今はまだ分からないよ」
「なら!」
 大きな声で言った銀子が一呼吸置いて、さらに続けた。
「なら、真九郎はラーメン屋さんで、私はそのお手伝いをする!」
 真九郎はちょっと考えて、銀子と同じ笑顔を浮かべて
「うん。銀子ちゃんとラーメン屋さん」
 そう言って笑った。
 それに反応したのか分からないが、ギンクローが駆け出して真九郎が引っ張られると、なんだかおかしそうに笑いながら銀子がその後を追いかけた。

 無機質な予鈴のチャイムの音で銀子はハッと目を開けた。
 時計の数字が少し進んでいる。
 いつの間にかパソコンの前で器用にも座ったまま眠ってしまったようだった。
 それにしても、と画面に映った犬の写真と名前を見ながら思う。
 夢に見るほどあの犬を探し出したいと思っていたのだろうか。
 いつの間にか消えてしまった犬のことも心配だが、それ以上にあの犬を真九郎が見たらどう思うのだろう。
 まず、生きていたことを喜ぶだろう。
 次は?
 それがどうなるというのだろ。
 あの場面を覚えていたとして、真九郎はどう思うだろうか。
 子供の約束ごときに。 
 と、部室の戸が開けられた音で我に返った。
 ノックをせずにこの部屋にやってくる人物は一人だけだった。
 銀子はメガネを指で押し上げると、いつもの鋭い目で振り返った。
 真九郎が困った顔で頭をかきながら立っている。
 おそらく何か依頼の話だろう。
「……バカ」
 画面に向き直りながらそう言うと、真九郎がさらに困ったように拝みながら話しかけてきた。
 食うに困った依頼の話。
 まじめに真九郎の話を聞きながら、画面をスクロールしていた銀子の指が止まったのはそのときだった。


 
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