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妖々夢より アリスと魔理沙の出会い

「妖々夢より アリスと魔理沙の出会い」(アリス・魔理沙)
 東方創想話から転載
2010.12.04 UP

かわふじ


 舞い散る雪。

「さむい……」

 アリス・マーガトロイドは思わずつぶやいて身をすくめていた。
 吐息が凍る春。
 幻想郷はいまだ雪に閉ざされたままだった。
 記憶をたどる限りこのような異常気象が起こったことはない。
 ふだんならば春を知らせる妖怪が駆け巡り、冬眠から覚めた妖怪がちょうど満開になった桜の下で大騒ぎをしていてもいい頃だった。
 雪があまりに続くので、郷の経済活動はほとんど麻痺していたし、春になると出てくる妖怪もいない。
 冬の妖怪も長すぎる冬に戸惑うほどだ。
 もっとも、知能のあまりない妖精達は雪遊びに夢中で春のことなどすっかり忘れ、この異常な長い冬を堪能しているようだった。
 それも次第に大きな問題になるだろう。
 寒さのせいで怒り狂った巫女が暴れて多くの妖怪が退治されてしまったり、吹雪で日光が弱まったのをいいことに吸血鬼が幻想郷中を闊歩したりするかもしれない。
 挙げ句の果てには一部の宴会好きな妖怪が、花見ができずに異変でも起こすかもしれない。
 一向に春がやってこないのは人間にとっても妖怪にとってもマイナスでしかないのだ。
 このまま春の時期が終わっても冬が続くようならば、幻想郷は崩壊してしまう。
 アリスもとうとう気になっていると家を出ると住み処のある魔法の森から空からの強風に逆らって幻想郷を飛び回っていた。


 人気のない人里から雪に閉ざされて久しい幻想郷中を調べ歩いたのち、不思議な場所にたどり着いていた。
 吹き付ける風に原因があるのかもしれないと思ってひたすら空を目指した結果がこれだ。
 雲の上の冷たい風が渦巻く静かな空間。
 結界で閉ざされて袋小路になったその空間には雪が吹きだまっていて、その周囲は確かな冬の気配で支配されていた。
 この異変は雪が降り続けたり冬の妖精が遊んでいたりと、見た目からずっと冬が強すぎるから春がやってこないものだと思っていた。
 こんなところに大きな結界を張っているんだから、誰かが何かをしているに違いはない。
 誰が何の目的で行っているかもちろん知らないけど、そんなことよりも誰かが何かをしていることが幻想郷にとって問題なのだ。
 人形を周囲に散開させて見張りを任せて結界に近づく。
 結界にうかつに触れてしまったら、何かが起こるのが相場だ。
 例えば、門番が飛んできて戦闘になるかもしれない。
 臆病なわけじゃないけど、少しくらい慎重にならなければ妖怪だらけの幻想郷で長生きなんてできないだろう。
 それでも好奇心には勝てずに結界の目の前まで近づいて詳しく観察してみることにした。
 見た限り、特に何の罠も仕組まれていない、ただの壁のような結界だ。
 人形を使って詳しく調べてみても結界を張った主に関するような情報は全く得られなかった。
 そもそも、こんなところが存在することを知らなかった。

「雲の上にあるってことは天界かしら?」

 だとすればかなり面倒な事態だ。
 天界だとすればそこに住まうのは天人と決まっているし、地上の妖怪とくらべたら天人が強いのは明らかだ。
 ここでむげに戦闘になるのは好ましくはない。
 そんなことを考えながら結界を調べていくと、結界に引っかかったピンクの物体が目についた。
 近づいて慎重につまみ上げる。
 それは見覚えのある花びらだった。

「……桜?どうしてこんなところにあるのかしら」

 周囲を見渡してみてもこんなところに桜の木があるはずもなく、幻想郷の桜はまだつぼみから育ってすらいなかった。

「本当に冬のせいじゃなさそうね」

 この花びらは結界の向こう側から流れてきたのか、それとも結界の向こう側に持って行かれているのか。
 何となくわかってきた。
 これでこの結界の向こう側に犯人がいるというのに間違いはないようだ。
 ということは、これを手っ取り早く解決するためにはその相手と戦う羽目になるだろう。
 しかし主犯と戦うのは自分の役名ではない。
 大きなため息をついて結界に背中を向けた。
 戦いは苦手ではないが人間ではない私が妖怪を退治するのはあまりいいことではない。
 適当に妖怪退治をする人間に助言でもすればいいだろう。
 幻想郷では異変を起こした妖怪を退治役の巫女が倒すことで妖怪と人間の強さのバランスを保っているのだから余計な手出しはすべきではないと思う。
 巫女にどうやって助言しようか考え、元来た道を戻った。



 予想外の遠出に気がつくと、夕刻はとうにすぎてすっかり周りは暗くなっていた。
 強くなる吹雪も相まって、とても感傷的になってくる。
 春が来なければ幻想郷のパワーバランスはめちゃくちゃになるだろう。
 けれど、それを阻止しようと自分で出て回っても、現在均衡がとれている妖怪同士の関係が乱れてしまうかもしれない。
 妖怪同士のにらみ合いに自分が挟まるのはごめんだ。
 もっとも、幻想郷全体をかき乱せるほど自分が強いわけもないんだけど。
 そんなことを考えながら帰路をたどり、魔法の森まで後半分くらいのところまで来たときのことだった。
 ただでさえ日が落ちていて視界が悪いのに吹雪いていたものだから視界がほとんどなく、接近してくる者に気がつくことができなかった。
 周囲を警戒していた人形達が騒がしくなった。
 ほとんど不意打ちに近い遭遇に、思わず弾幕を展開。
 接近してくる者を密度の低い弾幕で牽制する。
 万に一つ人間の通行人ならば驚いて逃げ出すだろう。
 もしそれが妖怪だとすれば人形が騒ぐ程の間合いまで接近されるのは危険すぎる。
 弾幕の密度を調整しながら相手の反応を確かめようとした、そのとき。
 人形がアリスの進路を妨害した。
 敵の攻撃に対抗する防御を命令した人形だった。
 突如、吹雪の向こう側から飛んできた弾幕を人形がすべて受け止めた。

 攻撃された!

 とっさに、物陰に飛び込む。
 しばらく待ったが追撃してくる様子はないようだった。
 もしも相手が人間だとすればそもそも弾幕に応戦なんてしてくることはないはずだ。
 ということは相手はある程度の力を持った妖怪ということになるだろう。
 しかもさっきの弾幕からは妖力や霊力を感じることはなかった。
 あれは魔力による弾幕だ。
 となれば相手は魔法使い、同業者である可能性が高い。
 ならばあまり関わらない方がいいかもしれないが、何者なのかわからないままなのも気持ちがいいものではない。
 今後、同じ魔法使いとして何らかの関わりがあるかもしれないと、興味本位で物陰から飛び出すと、運良く目の前に人影があった。
 人形を引っ込め、自ら弾幕をなぎ払うように放った。
 敵は弾幕を苦もなくやり過ごすとすぐに反撃を仕掛けてくる。
 手練れで間違いない。
 タイミングよく吹雪が弱まり、相手の姿を確かめることができた。
 夜に溶けるような真っ黒な服装に、自分の背丈もある大きなホウキ。
 微かな月明かりに輝く金色のロングヘアが風でなびいている。

「……見覚えがあるわ」

 つぶやきの答えのようまっすぐ飛んできた弾を何とか回避して、再び身を隠した。
 今の弾幕で目でも覚めたのか、妖精達が小柄な魔法使いに群がっていく。
 妖精は遊び相手だと思っているのだろう。
 妖精と魔法使いが弾幕戦を開始した。
 チャンスだ。
 当分の間は妖精の相手に手一杯でこちらを追ってくることはないだろう。
 適当に移動しながら記憶をたどった。
 幻想郷で会っただろうか。
 だとしたらそんな最近のことを忘れるはずはない。
 あんな派手な魔法使いを忘れるはずがないだろうし、何よりもまだ私には幻想郷での知り合いは多くない。
 人里で人間に声をかけられることは何度かあったが、妖怪や魔法使いと仲良くなった記憶は今のところない。
 となると、もっと前。
 幻想郷に住み着く前のこと。
 幻想郷からも行き来ができる――魔界に居たときのことだ。
 知り合いのような関係ではなかったと思う。
 もっと面倒な記憶に分類される出来事だったような気が……。

「あの魔法使い!」
 
 かなり鮮明に思い出してしまった。
 いつだったか魔界に乗り込んできた魔法使いがいたんだ。
 魔理沙と言ったか、魔界をめちゃくちゃにしたあげく私のグリモワールの中身まで持ち出そうとした、人間だ。
 もう恨みはないが、それでもこんなところであったのだから弾幕ごっこの一戦くらいしたって罰はあたらないと思う。
 少し進んでから、広さのあるところを見つけて振り返った。
 さっきまでの吹雪が嘘のように静まり、雲の隙間からのぞいた三日月が真っ白な雪の地面に反射してふだんよりも明るい夜だった。
 久しぶりに見た月のように思った。
 雪が音を吸収してしまっているからかもしれない。
 なんだかとても静かすぎて、月明かりが降り注ぐ音まで聞こえてきそうな感じがした。

 決して悪い夜ではない。
「なんだか、居心地がいいぜ」

 見上げていた視線を声がした方へ向ける。
 暗がりの中、それでも月の光で照らされた人間が居た。
 相変わらずの真っ黒なとんがり帽子に大げさなホウキ、大きな瞳が空を見上げている。
 間違えるはずはない。

 彼女はあの人間の魔女だ。
「こんな殺伐とした夜がいいのかしら」

 いつも通りの声量にもかかわらず、空気が声を大きく伝える。

「いいんだよ」

 目を細めてゆっくりと霧雨魔理沙がこちらを見た。
 髪と同じ色の綺麗な金色の瞳が月明かりに揺れた。

 目を伏せたのかもしれない。
「久しぶりね」
「そうでもないんじゃないか?」

 魔理沙は帽子のつばを持ち上げでキザったく言った。
 その様子からは私のことを覚えているのか、考え事をするときに帽子をいじるのが癖なのかどうともとれない感じに見えた。

「妖怪かしら?」

 あえて名前を聞こうとは思わなかった。
 だからと言って他に話題も見つからず、思わず口から出たのがそんな言葉だった。
 あのときも最初からけんか腰の会話だった気がして、なんだか同じことが繰り返されるような気配を感じた。

「ほう。腹話術士からはそう見えるのか」

 そうだった。
 勝ち気そうに見える通り、この人間はこういう返しをしてくるタイプだったんだ。
 これではこの人間が私のことを覚えているのかどうかなんて計ることはできない。
 できれば覚えているのかだけでも知っておきたかった。
 あの魔法使いならば少しくらいいじめないと気が済まない。

「いえ違ったわ。所詮、野良魔法使いね」
「温室魔法使いよりはよくないか?」
「都会派魔法使いよ」

 魔法使いを引き出そうと言葉を選んだつもりが、妙な流れになってしまった。

「あー?辺境にようこそだな」

 よく返すわね。
 思わず頭に来た。
 魔理沙はいつの間にか帽子にかけていた手を、またいでいるホウキに添えている。

「田舎の冬は寒くて嫌ねぇ」
「誰の所為で春なのにこんな吹雪にあってるんだよ」

 魔理沙がわざとらしく真っ黒な魔女服に積もった雪を払った。

「ちなみに私の所為ではないわ」
「そうかい。でも、なけなしの春くらいは持ってそうだな」

 魔理沙の視線が下がった。
 その視線を追いかけ自分の手にたどり着いて納得した。
 いつの間にか握っていた手を開くと、結界に張り付いていた桜の花びらがあった。
 何となく納得した。
 これは必然なんだろう。
 私がけしかけることなく魔理沙は人間として異変を解決しようと動いていたし、そんな道中に私が居るのだからこれは戦闘を避けることは叶わない。
 私が望んでも望まなくても。

「私も、あなたのなけなしの春くらいをいただこうかしら?」

 なんだか悪役みたいだと言いながら思った。
 こうなったら弾幕ごっこを試してみるいい機会だとあきらめて戦うだけだ。
 正面の魔理沙が身構える。
 さっきホウキを握り直した意味が何となくわかってしまった。
 魔理沙はそもそも私と遭遇したときからそのつもりだったんのだろう。
 いいわ、ならとことん戦ってみるだけよ。
 スペルを中に放り、弾幕ごっこの開始を宣言した。
 弾幕ごっこのためのスペルカードを空に放ると、風にでも乗ったように自分の周りを漂い始める。
 その数4枚。
 魔理沙が勢いよくホウキで突撃してくるのを、弾幕を展開して牽制。
 すぐに人形を追加して制御可能な弾幕を追加した。
 弾幕を回避しながら、スペルカードの宣言に備えてか魔理沙が後退する。
 妙な態勢をとれられる前に、すぐさまスペルカードを宣言。

「蒼符『博愛の仏蘭西人形』」

「お手並み拝見だぜ」

 人間魔法使いの生意気な言葉にカチンとしながらも、人形を自分の周囲に配置。


 人形が弾幕をばらまき始めた。
 このスペルは当たりをつけて攻撃するタイプのものではない。
 動き回る人形から手当たり次第に攻撃させ、全方位にばらまかれる弾幕を防壁にしながら敵の力量を計ってしまおうと言う感じである。
 この間に敵の癖があればそれを人形に学習させればいいのだ。
 後は人形に命令を出すだけで、徐々に弾幕の難易度も密度も高くなっていく。
 魔理沙が後退した位置で弾幕を難なく回避しながら反撃の魔法攻撃を仕掛けてくる。
 前方に展開した人形が魔法耐性の高い魔法障壁で、魔理沙の攻撃を受け止めた。
 一発の攻撃力はさほどないが、激しい連射でみるみる人形が壊れてゆく。

「ぬるい弾幕だな」

「やっぱり手練れの魔法使いなのね」

「そういうおまえもやっぱり温室魔法使いって感じだぜ」

「まだいうのね」

 一つ目のスペルカードの効果時間が過ぎ、スペルが無効になる。
 同時に正面の人形がついに壊れ、魔法の糸の制御から外れて落下した。
 無効になったスペルカードが手元に戻ってきた。

「どんどん行くわよ」
「期待なんかしてないぜ」

紅符「赤毛の和蘭人形」

 仏蘭西人形のスペルよりも多い人形を、今度は空中に制止させて配置した。
 魔理沙がさらに距離をとって警戒する。
 が、それが仇になった。
 人形が放ったのは数発の弾をまとめて撃ち出す散弾だった。
 飛翔距離に比例して弾の間隔が広くなって広範囲に弾幕を振らせることになる。
 数体の人形が一斉に攻撃したので、人形から距離をとっていた魔理沙の元にはかなりの密度の弾が押し寄せた。
 勝てると一瞬思ったがさすが手練れの人間だった。
 飛行速度や態勢を変えて巧みに弾幕を抜けると、散弾が広くならない接近戦に持ち込んできた。
 あっけなく撃墜される人形に、スペルカードが効果を失ってグリモワールに収まった。

「少しだけ危なかったぜ。新参の割にはよくできてるぜ」

 魔理沙はお決まりのように帽子を手で治した。

「都会派だもの」
「はいはい。最後までそんなこと言ってられるかな」
「それはこっちのセリフだわ。人間のくせに」
「人間で魔女ってかっこいいだろ」

 魔理沙が歯を見せて笑った。
 なんだかずるい。
 皮肉でも返そうかと思ったけど、結局何も思い浮かばなかったので、誤魔化すようにグリモワールを開いた。

闇符「霧の倫敦人形」

 人形が再び動き出して弾をばらまき始める。
 正面の魔理沙が今度は中距離で弾幕の展開に備えている。
 しかし、今度の弾幕は距離には関係なく人形がやたらめったら弾をばらまくだけのスペルカードだった。
 最終的な弾幕は仏蘭西人形のスペルに似ているが、こちらの方が圧倒的に弾数が多い。
 あっという間に空間が弾幕で埋め尽くされた。
 この弾幕に決まった攻略は存在しない。
 人形が気まぐれに放つ弾幕に規則性はないので、ただひたすら弾幕を見切って回避するしかないのだ。
 華やかさには欠けるが、地味に撃破を狙った弾幕だ。
 さすがの魔理沙もこれには苦戦している。
 それほど弾速の早くない密集系のスローな回避は神経をすり減らしてゆく。
 魔理沙もホウキを横に振ったり縦にしてみたりと、試行錯誤しながら弾幕を回避してはこちらに攻撃を与えてくる。
 耐久力のある人形が弾幕を苦もなく魔法で相殺する。
 長期戦になればなるほど魔理沙の被弾率は上がるだろう。
 安全に弾幕を回避するため、魔理沙が必要以上に後退したときだった。
 態勢を崩してホウキの機動が乱れた。
 そう見えた。
 ぎりぎりで回避していた弾幕にひっくり返りながら自ら突っ込んでいく。
 ここからの立て直しは物理的に不可能だと、勝利を確信した瞬間。
 どこからともなくこぼれ落ちる一枚のスペルカードに目を奪われた。

「マスタースパーク!」

 魔理沙のスペル宣言と同時にあふれ出す魔力。
 並のスペルの魔法量を遙かに超えた魔力に、人形の制御を切り離して盾人形へ魔力を回す。
 恐ろしく太いレーザーが散開したすべての人形を吹き飛ばし、最後に残った盾人形が燃え尽きたところでレーザーが止んだ。
 敗北した倫敦人形のスペルがが音も立てずにグリモワールに戻った。

「でたらめな火力にも程があるわ」
「ちょっとしたサプライズだぜ」

 魔理沙がにやりと笑って使ったばかりのマジックアイテム――八卦炉を懐にしまい込んだ。

「やっぱり、ここには妙なのが多いのね」
「そりゃ、あちこちで妖怪がにらみ合ってるんだ。魔界よりも殺伐してるだろう」
「やっぱり。人違いじゃなかったのね」

 頭痛を覚えて頭を抱えた。
 見た目は確かに似ていたが、雰囲気が少し違っていた気がして今ひとつ確信が持てずにいたのだ。

「こんな奴が他にも居るなら是非とも遊んでみたいぜ」
「なんだか当人だと思ったらイライラしてきたわ」

 怒りが沸いてくるのも当然だ。
 かつて魔界がこの一味によってひどい目に遭わされている。
 自分もだが、創造主の神綺様までもが敗北した因縁の相手がいるんだ。

「八つ当たりか?」
「昔あんな目にあって、今さっきあんなスペルを見せられたら八つ当たりもしたくなるわ」
「まるで私の所為みたいだな」
「まるであなたの所為なのよ!」

 ホウキにまたがったままくるりと宙を回りおどけてみせる魔理沙。
 グリモワールを構え直し、最後の人形達を展開する。

「こいつで解決するしかないみたいだぜ」

 魔理沙がスペルカードを放る。

「今度こそ負けないわ」

 負けじと最後のスペルカードを発動させる。
 グリモワールが盛大にめくれあがり浮かんでいた人形が戦いのための行動に切り替わる。

「妙に自信あるんだな?」
「あなたとは違う、本当の魔法を思い知るがいいわ」

 宣言。

咒詛「魔彩光の上海人形」

 人形が展開する弾幕に対峙した魔理沙が、月光の中怪しく笑ったような、そんな気がした。



「本当にでたらめね」

 攻撃手の人形が空からすべて消え、思わずつぶやいていた。
 殺しきれなかった弾幕が着物を所々裂いている。
 せいぜい人形が落とされる程度だと思っていたのだが、それにしても手ひどくやられてしまった。

「いつも冬ってこんなに騒がしかったのか?」

 ホウキを肩に担いで歩み寄ってくる黒い魔法使いがため息のように言葉を吐いた。

「知らないわよ」

 魔理沙が帽子をとってホウキに引っかけて頭をかいた。

「大体ふつうの人間は表に出ないからな」
「私をふつうの人間と一緒にしないでよ」
「異常な人間か?」
「ふつうの人間以外!」

 思わず声を荒げた私に魔理沙が笑いかけてくる。

「つまりは魔女ってことだな」

 人間はおそらく分かっていてからかうんだからたちが悪い。
 もっとかわいい冗談ならいいのだが、皮肉が多すぎる。
 幻想郷の魔法使いは皮肉屋ばかりなのだろうか。

「からかわれてるってわかってても頭にくるわね。前もそんな感じだったかしら」
「どうだったかな。それよりも、おまえの持ってる春をいただくぜ?」

 魔理沙の視線を追いかけ、思い出した。
 いつの間にか握りしめていた左手を開くと、まるで今散ってきたばかりのような、鮮明な桜色の花びらがあった。

「まさかこれが本当に春だったなんてね」
「どうやってかこいつを集めてる奴が居るようなんだ。おまえじゃなくてよかったがな」

 そう言いながら私の手のひらから、花びらをつまみ上げる魔理沙。
 その触れた指先の温度に思わず目を開いた。
 触れて初めてこの魔女が人間なんだと理解した。
 同時に、力なき人間が妖怪や魔法使いと同等に存在する不思議が何となくわかった。
 こういう不思議な人間が幻想郷をうまくバランスとりしているのかもしれない。

「なけなしの春はもらったことだしな」

 気がつくと背を向けた魔理沙がホウキにまたがって来たときのように月を見上げている。

「どうするつもりよ」

 私のセリフに振り返る魔理沙。
 口元にはあの怪しい笑みが残っている。

「春を取り返すに決まってるだろう」
「どんな目に遭ってもしらないわよ」
「おまえが言うのな」
「うるさいわね」
「まぁ、この先なんだ行ってみるさ」

 浮かび上がった魔理沙の表情は月の淡い逆行でよくわからなかった。
 きっとこの状況を楽しんでいるに違いないだろう。
 そういう変わった人間だ。

「気をつけて」
「特におまえにはな」

 本当に変なやつ。

 思わず微笑んでしまった自分の表情に気がつき慌てて無表情を作る。
 春の欠片の効果がなくなってきたのか、また吹雪が強くなってきた。
 気がつけば明かりのない真っ暗な夜が包んでいる。
 本格的に帰れなくなる前に家に帰ろう。
 帰り道をたどりながら、あの魔女にはちょっと注目してみようと思っていた。

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