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「残暑見舞い2 (パチュリーの場合)」

2010.09.20UP

「残暑見舞い2 (パチュリーの場合)」(魔理沙 パチュリー)

かわふじ


 暑くないし寒くもない、湿度もどっちともとれないくらい。
 それがパチュリーの大図書館だった。
 湖の畔にたたずむ紅魔館はその立地から霊夢のところよりも少し蒸し暑いかもしれないと覚悟していたのだが、館に入ってみればどうと言うことはない。
 日光がだめな吸血鬼の住処ということだけあって、窓っどころか光が入り込む隙間がない。
 石造りで空気の出入りが夜しかないということもあって紅魔館の中は不気味な肌寒さがあった。
 何に一番近いだろうかと考えて、洞窟を思い出した。
 しかしそれも紅魔館の地下に潜るまでだった。
「また、何しにきたのかしら」
 小さな声が遠くから聞こえる。
 遠くから小さな声が聞こえるというのは不思議なことだ。
 小さければ遠くに届くこともないし、届けようものならばそれは大きな声になる。
 相変わらずパチュリーの魔法は無駄に洗練されていた。
 大図書館は寒くもなければ暑くもなく湿気もよくわからないくらいだった。
 考えてみれば年中こんな感じだったかもしれない。
 冬に来たときも寒いとは思わなかったし暖かいとも感じなかった。
「ちょっと涼みにな」
「……」
 何も返答がないってことはパチュリーが許可したということだ。
 ならば気兼ねなくお邪魔させてもらおう。
 もっとも帰れと言われたところで気兼ねなく本を散策し拝借するが。
 図書館を奥まで進んでいくとパチュリーがいつものようにだるそうに本を眺めていた。
 いつもおもうんだけど、パチュリーが本を読んでいる姿以外を見たことがないなとおもう。
 たまには本棚の掃除でもしていたらおもしろいとおもったこともあったのだけど、 試しに言ってみたところ魔法を使って一瞬で図書整理が行われたのでもうその辺りの希望を持つのはやめた。
「ちょっと聞いていいか」
「なに?」
 振り向きもしないパチュリーが抑揚のない声はいつものことだ。
 始めてくる者なんていないだろうけど、これを初めて聞いたら絶対に起こらせた とか機嫌がわるいとかおもって萎縮してしまうかもしれない。
 本当に機嫌が悪い可能性もあるが、それはまあ本人の問題だ。
「この図書館に関することなんだがな」
「最初は私も図書館と呼んでいたわ。でもね、ここは私設図書館であって公設ではないの」
「おおう?」
 パチュリーは珍しく魔法でも詠唱するかのように流れるように言ったが、唐突過ぎて何をパチュリーがいいのか一瞬では思い浮かばなかった。
 ちょっと冷静になって考えてみればわかることだ。
 パチュリーがいつも私に一番最初に言う台詞。
「でね、泥棒魔理沙。今日は私の本を返しに来たのかしら、それとも今日も私の本を無断で持って行くのかしら?」
「おいおいおい、何を言い出すかと思えばその話か」
「言い間違えたわ。今日も本を盗んでいく気ね」
 質問されたとおもったら回答になっていた。
 ああそうか、パチュリーはよくわからないが今日は機嫌がわるいんだな。
「私がいつパチュリーの本を盗んだっていうんだ」
「昨日、その前。そして今日、明日」
 詩的だな。
 そんなことを突っ込んでやりたいが、パチュリーの機嫌がこれ以上悪化してはかなわないからここはあえて乗ろう。
「盗むっていうのは、どういうことなんだろうな」
「強制的に所有権が変わるってこと、私の本があなたの本になる。ごまかそうとしても無駄よ」
「それは違うぜパチュリー」
 声のトーンを落としてゆっくりと言い聞かせるように言いってみせる。
「どう違うって言うのよ」
 すぐに反論してこないところパチュリーはいつだって冷静だってことだ。
 ならばそのペースを崩してしまうに限る。
「本は私の家にあってもパチュリーのものってことだ」
「だから?」
「私はパチュリーのものだと思っている。そしてそれは私の家にあるんだ」
 パチュリーが首をかしげた。
 それは事実でしかないからあえて言うまでもないと言うことか。
 相変わらずありがたい方向に鈍いやつだ。
「あたりまえじゃない」
「私は本をここからしか本を持ち出さない。パチュリーの本しかだ。……後はわかるな?」
 困り疑い目を見開いたかと思うとすぐさま私から目をそらした。
 病的に白い頬に少しだけ赤くなる。
 これで今日はこの話題が出てくることはないだろう。
「ってことで今日はお宅拝見のコーナーだぜ」
「んむ?」
「ここはいつ来てもこんな感じだが、どうやってるんだ?」
「話が全くわからない。本の話をしているの?」
「いや、お宅拝見」
 パチュリーが頭を抱えてテーブル向かいの椅子を指さした。
 ちょっと落ち着けという意味らしい。
 お言葉に甘えて椅子に座って机の上の本を一冊取り出してぱらぱらとめくってみる。
 パチュリーはこういった行為には全く突っ込むつもりは無いようだった。
 本人が人と話をしながら本を読むくらいだから当たり前だとおもっているかもしれないがあえて何か言おうとは思わない。
「いつも思うんだがな」
「いつも話が唐突よね、魔理沙って」
「この家はいつも茶が出ないな」
「帰って飲めばいいと思うわ」
 冷たく聞こえるがいつもの台詞だ。
 パチュリーは本に視線を落としたままで、顔色も変えていないと思う。
 だから何かリアクションが出るくらいまで突っ込んでみるのはよくあることだ。
「パチュリーのお茶が飲みたいとおもっただけだ」
「魔法使いがお茶を飲むわけ無いでしょ」
「アリスはちゃんと私の相手してくれるぜ?」
 パチュリーがぴくりと動いた。
「一緒にしないでって言ってるでしょ」
「どう違うって言うんだよ」
「いちいちめんどくさいわね」
 パチュリーが長いためいきをついて本を閉じて机の机の上の本の山に積み上げた。
 そして本棚の向こう側にむかって一回だけ手招きをした。
 パチュリーと魔理沙以外誰もいないと思っていた図書館に司書らしい洋服にタイを締めた小悪魔が現れた。
 音もなくあゆみよってくると、机の上に一つだけカップをおいて紅茶を注ぎ始める。
「パチュリー様は素直じゃないですからね」
パチュリーには聞こえないような小声で小悪魔がほほえみながらささやいた。
「さすが使い魔。よくわかってるな」
「何もわかってなんてないわ」
「ちょっと、盗み聞きなんてひどいですよ」
 小悪魔がかわいくほっぺをふくらませてパチュリーに抗議する姿に、頬がゆるみそうになるのを必死にこらえた。
 主はこうも無表情なのに小悪魔はすごく表情豊かだ。
 無邪気というか天然というか悪魔を名乗る割にはおそろしさが全くない。
 それがある意味小悪魔のいみなのかもしれないな。
「用が済んだらすぐに下がりなさい」
「呼びつけておいてそれはひどいですよね」
「そうおもうぜ」
 同意をもとめられたものだからつい反応してしまった。
 パチュリーが目に見えて不機嫌になったので、小悪魔が焦って紅茶をそそぐと逃げるように本棚の奥にきえていった。
「おまえは少しあいつを意識しすぎ何じゃないか?」
「誰のせいだと思ってるのよ」
「私のせいってことか」
「どっちもどっちよ。ちなみに言えばアリスよりもあなたの方が好きじゃないわ」
「本は借りてるだけだ」
「だけじゃないでしょ。人間のくせに」
 なるほどな。
 パチュリーはもしかしたら人間が苦手なんじゃないか。
 幻想郷にきてから人間と何かあったという話は聞いた覚えがないから、きっとパ チュリーの人間嫌いは紅魔館が幻想郷にくる前の話になるのか。
 それともパチュリーのプライドの高さなのかもしれない。
 なんにせよ、簡単に今日明日どうにかできるような問題では無いようだと言うことはわかる。
 わかった以上私にできることは何もないので、ここはいつも通りにするにかぎるんだ。
「そういえな魔法使いは使い魔を持つものなのか?」
 パチュリーが目を細めて何かを思い出そうとしている。
「それはよく言われていることよ」
「おまえの場合小悪魔か」
「どの辺が悪魔なのかたまにわからなくなるけどね」
 やはりパチュリーも感じていたのか。
 主がそう感じているのだからよほど悪魔らしくないんだな。
「しかしアリスにはいないよな」
「あれは人間からなった魔法使いだからあなたと同じよ」
「そういうものなのか?」
 考えてみたけれどアリスとパチュリーがどう違うのかよくわからなかった。
 ただしく言えば違うところだらけで、同じ魔法使いなのかもあやしいくらいだ。
「言ってしまえば人形がそうなんじゃない?」
「なるほど」
 確かに意志は持っていないが使い魔としては最高だろう。
 思い通りに動かすことができるだけじゃなくて自爆なんていう戦い方もできる優れものだ。
「私はなにがいいかね」
「せいぜいペットでしょ。犬でも飼ってみれば?」
「犬型の妖怪なんていいたかな」
「そう魔理沙が飼われたいのね」
「それはない」
 パチュリーは相変わらず賢い言い方をしてくるなとおもう。
「そういえば、本題をわすれていたぜ」
「本なら貸さないわ」
「そればっかりだな。この図書館だがな、どうやって快適空間にしているんだ?」
「へえ、いがい」
 パチュリーがかわいらしいめを大げさに見開いた。
 少し心外ではあるがいいリアクションだ。
「最近むだに暑いだろ。ここは相変わらずいいところだからな。いったいどうなっているのかと思ってな」
「魔法で、してるわ」
「そんなのは百も承知なんだよ」
「複合魔法ね。そんなに複雑でも何でもないわ」
「ほうほう」
「空気中から水を取り出せばからっとするし、熱の原因を絶てば自ずと涼しくなるものよ」
 直射日光をさけているということか?
 考えてみればここは紅魔館の地下だ。
 日が当たることなんてないし日が差し込む窓も存在しない。
 入り口は一カ所だからそこを塞いで魔法を使えばからっと快適ということか。
「なるほどな。全くどうやって魔法を活用しているのか見えてこないな」
「未熟だからよ」
「それはひどいぜ。本物の魔女ならばそこをわかりやすく解説できてんなんぼじゃないのか」
「魔法は人から学ぶものじゃないわ。自分で発見するものよ」
「それは納得だな」
 魔法は自分で見つけるもの。
 魔法の森でキノコを集めながら魔法を使っている身としてはもっともなことだ。
 この技術に関する本はほぼ存在しないし、一番詳しいのは自分だといいはれる。
 もっともご老体にはかなわないが、それでも自分でみつけてきたものだ。
 同じ誰にでも同じような火力を発揮する魔法は画期的だが、似た魔法をつくることができても全く同じ魔法をパチュリーやアリスが使うことはほとんどむりだろう。
「手っ取り早く涼しくなる方法はないのか」
「氷でも降らせれば?初級魔法で十分いけるとおもうけど。現にコールドインフェルノがあるでしょ」
「チルノでもさらってきてハグるか」
 パチュリーが大げさに本を開いて顔を隠すように持ち上げて読み始める。
 わかりきっていたことだけどこの暑さは解消されないらしい。
 いっそのこと紅魔館の人間メイドにでもたのんで夏をすっとばしてもらうのもありかもしれないが、そういった応用ができるやつなのか仲良くないのでわからない。
「今日はあきらめて帰るのね」
 顔の見えないパチュリーの声。
「ここはすずしいから住もうと思ったんだがな」
「それもいいかもしれないわね。本が盗まれなくてすむわ」
「それは意外すぎだろう。まさか肯定されるとは雨でも降るんじゃないか」
「そんなことで雨がふるなら、あなたが本を返しに来たら夏だって雪が降るわ」
「それは考えもしなかったな」
 大げさに言って考え込むそぶりをすると、パチュリーが心底ため息をついた。
「霊夢なんかはアレだぜ、うちわでぱたぱただぜ」
「魔理沙と同じ人間だものね」
 嫌みな奴だ。
 それで妥協しろといいたいらしい。
「でも、巫女なら雨乞いの一つでもできるんじゃないのかしら?」
「霊夢が雨乞い。響きはいいな」
「なんのことやら。幻想郷で干ばつとかはきいたことないから、実際霊夢がそれをできるかどうかは分からないけどね」
「しかし雨乞いしてもな。暑いのにはかわりないだろう」
「だからあきらめなさいってこと」
 ふと本の表紙が目に入る。
 エアコン実現のための魔術応用。
 パチュリーの細くてきれいな字でタイトルが記されているところをみると、これはパチュリーが自作していりオリジナルの魔法書ということになる。
「エアコンってなんだ」
「なんでも部屋の温度を制御するものらしいわ」
「そんなもの無くてもここは十分快適だろう」
「まだよ。ここにはまだ加工されてない魔法書が山ほどあるわ。虫にたべられたりするのはいやだから」
「なるほどな」
 どうやらパチュリーはエアコンというものをしらないらしい。
 もっとも私は香霖堂の亭主に聞いたからしっているというものだ。
「しかしそれは正しくはない」
「どういうこと」
「エアコンていうものをみたことがないだろう」
パチュリーあ当たり前といったふうに首を縦に振る。
「引きこもりじゃしかたない。こいつはな密度を使っているんだが、それはしっているか」
「はじめてきくわ」
 パチュリーが興味津々といった感じで身を乗り出してきた。
 珍しい反応だ。
 何より私からパチュリーに有力な情報を与えることの方が珍しいのだからそれは当たり前のことだといえる。
「ちょっと貸してくれ」
 パチュリーの手から本を取る。
 興味を示したパチュリーは完全に無警戒に本を手放した。
「魔法を使って空気を圧縮することはできるか?」
「む。むずかしいわね、冷やせば縮むのはわかるけど具体的に圧縮させるとなると、まだ方法が確立していないわ」
「まあな。別に空気を圧縮する必要はない。圧縮しやすい気体を選んですればいい」
 なるほど、とパチュリーが感心したようにうなずき机の上の羊皮紙にはねペンを走らせる。
「この本の内容はどうなんだ?」
 開きもしないで無いようを聞いてみる。
 いつもらな嫌みの一つも飛んでくるところだが、
「それはね、水魔法を使って空気の中の水分を減少させるための魔法と熱だけど回収可能な魔法の研究の本よ」
 と素直な回答。
「圧縮よりも実現は簡単そうだな」
「そうね。でも効率はどうかしら。エアコンの魔法の法が完成すればいろいろと応用できておもしろいと思うわ、ここじゃ新しい理論だものね」
 パチュリーは楽しそうにペンを走らせ、本棚から本を飛ばして何かを調べている。
 完全に研究モードにはいってしまったらしい。
「さて、私はそろそろかえるぜ。また何か新しいことがわかったらもってくるぜ」
「そうね。ありがとう」
 私は何気ないふうを装って手にしていた魔法書をスカートの中に押し込んだ。
 パチュリーに背を向けて歩き出す。
 パチュリーは気がついていない様子だった。
「もうかえるんですか」
 途中すれ違った小悪魔がそんな声をかけてくる。
 腕の中にいくつも本が抱えられている。
 早速パチュリーのお手伝いというところか。
「おう。パチュリーによろしくな」
 大図書館唯一の出入り口である扉の前、取っ手に手を触れようとした瞬間。
「魔理沙」
 パチュリーの声に思わず動きを止めた。
 ばれたか。
 魔法の気配がする、が攻撃魔法のたぐいではない。
 何事かと首をかしげると、またパチュリーの声がした。
「本のプロテクトを解除したわ。それはここから持ち出しても呪われたりはしないわ」
「かなわないな」
 すべてお見通しってことか。
 しかも今日に限っては本を持って行けということだ。
 珍しいにもほどがある。
「興味が無くなったからよ」
 どこからとも無くパチュリーの声。
「なあ。気になったんだがどんな呪いがかかってたんだ?」
「森のキノコが火炎茸だけになる魔法」
「それはひどい」
 パチュリーの声が続くことはなかった。
 珍しいこともあるものだな、とおもいながら大図書館の扉に手をかけた。
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